グランプリファイナル2019の男女シングルは、息のつまる熱戦でした。
何だかもう異次元に高くなってしまった感のあるジャンプの回転数の争い、おもしろいけど長年のフィギュアスケートファンとしては、ちょっと違う、と思ったり。。。いろいろと複雑でした。
今季も楽しませてもらったグランプリ、選手のみなさん、ありがとうございました。国内戦に向けて、ケガのないよう体調を整えてくださいね!
GPF2019を制したのはネイサン・チェン 羽生結弦2位
優勝したネイサン・チェン選手と2位だった羽生結弦選手との点差は実に43.87点。羽生選手は試合後のインタビューで、差は点差ほどではない、というコメントをしています。
私もそう思いますが、ただこの差を埋めるのは、なかなかに容易ではないようにも思います。
最終結果
順位 | 名前 | 国 | 総合点 | SP順位 | FS順位 |
1 | Nathan CHEN | USA | 335.30 | 1 | 1 |
2 | Yuzuru HANYU | JPN | 291.43 | 2 | 2 |
3 | Kevin AYMOZ | FRA | 275.63 | 3 | 3 |
4 | Alexander SAMARIN | RUS | 248.83 | 5 | 4 |
5 | Boyang JIN | CHN | 241.44 | 6 | 5 |
6 | Dmitri ALIEV | RUS | 220.04 | 4 | 6 |
SPで13点以上の差が付いてしまいました。チェン選手が、4回転で一番点数の高いルッツを含めてミスなしで滑ったのに対し、羽生選手は4T-3Tのふたつ目のジャンプが付けられませんでした。
逆にコンビネーションジャンプに失敗したのにこの点数が出るのは、さすが羽生選手、とも言えますね。
2選手ともスピンステップは、全部レベルを取っていてさすがです。PCSは少し羽生選手の方が高いですが、ほぼ互角。そうなると、とにかくミスを最小限に抑える、という戦いになるということです。
それにしてもケヴィン・エイモズ選手の大躍進とキス&クライでの大喜びが、とても印象的。滑る度にうまくなるし、個性的な演技が光ります。
今回の試合は、(日本だけでなく)羽生対チェンの構図が出来上がってしまって、どうしてもそちらに気を取られてしまいましたが、他の4選手だって皆とても魅力的でした。
SP結果
順位 | 名前 | 国 | SP点数 | 技術点 | 演技構成点 |
1 | Nathan CHEN | USA | 110.38 | 63.13 | 47.25 |
2 | Yuzuru HANYU | JPN | 97.43 | 50.10 | 47.33 |
3 | Kevin AYMOZ | FRA | 96.71 | 52.50 | 44.21 |
4 | Dmitri ALIEV | RUS | 88.78 | 47.22 | 41.56 |
5 | Alexander SAMARIN | RUS | 81.32 | 39.82 | 41.50 |
6 | Boyang JIN | CHN | 80.67 | 40.10 | 40.57 |
アリエフ選手は、いったいどうしてしまったのか。。。フリーはボロボロ・・・お客さんが暖かかったですが、これはつらい。ケガとかしていないと良いのですが。
ボーヤン・ジン選手は、もしかしたらGPFに出られるとは思っていなかったのではないかと思います。あのビシッと美しい4Lzがなかなか戻ってきません。表現面での進化が見られるだけに、ジャンプがなかなか戻って来ないのはもどかしいです。
サマリン選手が持っている4回転は、ルッツとフリップなのかな。SPもFSもこの2種類を跳んでいますが、なかなか安定しない様子。フリーではスピンステップ全部レベルを取っています。2Tになってしまったのは、4Tのはずだったのかな。2T跳びすぎになっちゃいました。
フリーでも目立っていたのが、エイモズ選手。もちろんキスクラ選手権では1位。コーチのフォンタナさんが泣いて喜んでいて、もらい泣きしそうになりました。今度のヨーロッパ選手権が楽しみです。
羽生結弦選手はすばらしい4Loと4Lzで、最高の出だしでした(4Lzを跳んだ時には、つい「きゃ~!」と叫んでしまいました)。やはりこの構成は、前半でかなり体力を消耗するのでしょう。SPの点差が開いてしまったことから、難しい構成に変更したのだと思いますが、最後の3Aが1Aになってしまって、いつもなら加点バリバリの3Aが見られなかったのは残念だし、もったいなかったです。
とても魅力的な演技でしたが、とにかくいっぱいいっぱいだった印象です。
もしミスがなかったらどうなっていたのかはわかりませんが、ネイサン・チェン選手が(見た目)余裕で難しいプログラムをこなしていたので、この辺は緊張を強いられる競技会では、大きな差になるかなと思いました。
羽生選手のPCSでの優位性も、チェン選手の成長で差がなくなって行っていますからね。
羽生選手のジャンプ構成
4Lo、4Lz、3Lz、4S、4T+1Eu+3F、4T+2T、1A
チェン選手のジャンプ構成
4F+3T、4Lz、4T+1Eu+3S、3A、4S、4T、3Lz+3T
ネイサン・チェン選手があまりにすごいので、ケチを付けられるのは衣装だけ、衣装のこといろいろ言ってすまん、みたいな書き込みがSNSにはたくさん出てきます。
羽生選手とチェン選手は、いろいろな部分で対照的で(だから面白いのだけれど)、衣装でもそうですね。キラキラヒラヒラがたくさんついた、プログラムの印象を考え抜いた衣装を着る羽生選手。動きやすければいい、みたいなラフな衣装のネイサン・チェン選手。フリーのたくわんか卵焼きみたいな衣装を見た時には、思わず「うっそ~」と声が出てしまいましたよ。
FS結果
順位 | 名前 | 国 | FS点数 | 技術点 | 演技構成点 |
1 | Nathan CHEN | USA | 224.92 | 129.14 | 95.78 |
2 | Yuzuru HANYU | JPN | 194.00 | 100.36 | 93.64 |
3 | Kevin AYMOZ | FRA | 178.92 | 90.34 | 89.58 |
4 | Alexander SAMARIN | RUS | 167.51 | 84.43 | 83.08 |
5 | Boyang JIN | CHN | 160.77 | 85.35 | 77.42 |
6 | Dmitri ALIEV | RUS | 131.26 | 61.56 | 73.70 |
GPF2019女子の表彰台はロシア娘が独占
これはジュニアの表彰台ではありません、と注釈を入れたくなるような表彰式でした。
もちろんフィギュアスケートもスポーツなので、難しいことをした選手が上位に来るのは当然です。当然なんですけどね・・・
これから4回転や3Aジャンパーが20歳を過ぎて、それでも今の技術を維持して行って、他の選手もどんどん跳ぶようになって行く、という道につながるなら良いのですが。
とにかく今回わかったことは、ここしばらくは3Aか(と)4回転が跳べないと、大きな国際大会では(たぶん)表彰台に載れませんということです。
総合結果
順位 | 名前 | 国 | 総合点 | SP順位 | FS順位 |
1 | Alena KOSTORNAIA | RUS | 247.59 | 1 | 2 |
2 | Anna SHCHERBAKOVA | RUS | 240.92 | 3 | 1 |
3 | Alexandra TRUSOVA | RUS | 233.18 | 5 | 3 |
4 | Rika KIHIRA | JPN | 216.47 | 6 | 4 |
5 | Bradie TENNELL | USA | 212.18 | 4 | 5 |
6 | Alina ZAGITOVA | RUS | 205.23 | 2 | 6 |
女子のSPでは4回転が跳べないので、3Aジャンパーが有利になります。
別の言い方をすると、フリーで4回転を跳ばないのであればSPで差を付けておく必要があるということですね。
今回の出場選手の中で、3Aを跳ぶのは紀平梨花選手とロシアのコストルナヤ選手のふたりで、このふたりが俄然有利と思われていましたが、紀平選手がコンビネーションで転倒、3Aも着氷が乱れて何と最下位に。
コストルナヤ選手はミスをするんでしょうか(見た記憶がない)。完璧な演技でSP1位でした。
トゥルソワ選手が3Aに挑戦しましたが転倒してしまいました。3Aを練習しているという話しは聞いていましたが、ここで跳んでくるとは思いませんでした。もちろん練習では成功しているので、これからの試合ではわかりません。4回転に3Aも装備となれば、こわいものなし、ですね。
SP結果
順位 | 名前 | 国 | SP点数 | 技術点 | 演技構成点 |
1 | Alena KOSTORNAIA | RUS | 85.45 | 49.48 | 35.97 |
2 | Alina ZAGITOVA | RUS | 79.60 | 43.14 | 36.46 |
3 | Anna SHCHERBAKOVA | RUS | 78.27 | 43.72 | 34.55 |
4 | Bradie TENNELL | USA | 72.20 | 37.74 | 34.46 |
5 | Alexandra TRUSOVA | RUS | 71.45 | 39.65 | 32.80 |
6 | Rika KIHIRA | JPN | 70.71 | 37.29 | 34.42 |
ザギトワ選手、身体が大きくなって、女性らしいラインが素敵。脚がすっと長くてまっすぐで、いつもその体形にハート目になっています。でもこの体形の変化は、フィギュアスケート選手にとっては苦しいところなのだろうなと思います。最近はジャンプの回転不足が目立ってきました。
ジャンプをバンバン跳んで技術力で五輪の金をさらった少女が、大人になって表現力で勝負しようとしているというのは、象徴的。以前の負けなしのザギトワ選手よりも、今の彼女の方がずっと魅力的で好きなんだけれどな。。。
ブレイディ・テネル選手は、ちょっと硬い感じがするかな。模範演技を見ているような。そしてもしかしてSPのまっ赤な衣装は、変えた方が良いかも、よ。
紀平選手は、果敢に4Sに挑戦。転倒してしまいましたが回り切っているし、これからのことを考えると今回の挑戦は正解だったと思います。ひとつ目の3Aは、4Sの緊張と転倒をひきずってしまったかもしれません。スピンステップ、全部レベルを取れているし、PCSもミスがなければもう少し出るでしょう。
3Aは安定しているし、これに4Sが加われば大きな武器になります。でもそれより、早く足を治して(休めて)ルッツを入れた構成にした方が良いのでは、とも思うんですよね。これから全日本だし、オフシーズンまで今季はこのままなのかな、とちょっと心配。
アレクサンドラ・トゥルソワ選手は、珍しく4Tで転倒、4Sも2Sになってしまいました。それにしてもこのジャンプ構成、男子ですよね。いやはや。。。
アンナ・シェルバコワ選手は冒頭に4Lz+3Tをバーンと決めたあとで、4Fで転倒。2回目の4Lzは回転不足。基礎点85.78の構成です、やれやれ。。。Fsでは1位。
ちなみにトゥルソワ選手の基礎点は83.00 、紀平選手の基礎点は71.75です。
最終滑走のコストルナヤ選手は、3Aを2本入れたパーフェクト演技でした。基礎点が69.55。それでもミスがないのと、バリバリ稼いだ加点と、高いPCSでFS2位。SPの貯金で優勝となりました。
ロシアのシニア初年度3人娘ですが、ジャンプはすごいけれどスケーティングや上半身の使い方などが幼くて、ちょっと物足りないのですが、このコストルナヤ選手は別。何なんでしょうね、このオーラ、この優雅さ。美人さんなのもちょっと得かも。
ただこのコストルナヤ選手も、他のふたりにミスがなかったら技術点で大きな差を付けられてしまうんですよね。たぶん演技構成点ではカバーできないくらいの。今回ミスのあったシェルバコワ選手にフリーでは負けてしまっていますよね。う~ん、フクザツ。
FS結果
順位 | 名前 | 国 | FS点数 | 技術点 | 演技構成点 |
1 | Anna SHCHERBAKOVA | RUS | 162.65 | 94.52 | 69.13 |
2 | Alena KOSTORNAIA | RUS | 162.14 | 88.87 | 73.27 |
3 | Alexandra TRUSOVA | RUS | 161.73 | 96.80 | 65.93 |
4 | Rika KIHIRA | JPN | 145.76 | 77.90 | 68.86 |
5 | Bradie TENNELL | USA | 139.98 | 71.65 | 68.33 |
6 | Alina ZAGITOVA | RUS | 125.63 | 57.84 | 68.79 |
ISU Grand Prix of Figure Skating Final 2019 results
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