羽生結弦選手には、いつまでたっても「被災地出身のスケーター」というのが付いて回って、もうそろそろ解放されても良いのに、と思うことがあります。
滑る曲目も被災地とか被災者とか関係なく、自分の好きな曲を楽しく滑ったら、と思うのです。
今回の「24時間 愛は地球を救う」での、羽生選手のアイスショーは、とても美しく心を打つものがありました。
羽生選手が東日本大震災で被災したのは、16歳の時です。16歳なんて、本当にまだまだ子供。親の翼の下に保護されている年齢です。それなのにフィギュアスケートが上手だという理由で、被災地を背負ってしまったように感じるんですね。16歳でなくても、これはちょっと重すぎるでしょう。
今回の動画を見て、とてもうなずけることがありました。
「スケートのために、自分だけが逃れていて良いのか」と苦悩したという羽生選手。
震災の時には私たち海外在住者も、スケートのためではないけれど、こんな安全なところにいて良いんだろうか、とずいぶん葛藤があって、身体の調子を崩す人たちも多く、日本語のわかるカウンセラーが講演会を開いたり、カウンセリングの機会を設けてくれたりしたのです。
知名度も何もない私たちでさえそうだったのですから、羽生選手のような境遇にいる人たちは、やはり大変だったのだろうなあ。
今回のアイスショーの羽生選手の滑りを見て、涙が出てきてしまった人は、たぶんたくさんいたのではないかと思います。それだけ羽生選手の滑りには、心がこもっていたのだと、その心が私たちにも響いてきたのだと思います。
それでも、もう「被災地のスケーター」からは解放してあげたい。そう思います。まだ彼は、はたちになったばかりの青年なんだから。
羽生選手は、もう十分に私たちにいろいろなことを伝えてくれました。震災を風化させてはいけないけれど、風化させないようにして行くには、いろいろな方法があるんだから。